誤植を指摘する際の注意点
教科書の誤植や配布物の誤記を指摘する場合は、下記の点にご留意ください。
日本語の扱いについて
・特定の語句を漢字表記にするか平仮名表記にするかは、語句ごとに統一するのではなく、
その場所ごとにどちらのほうが読みやすいかを優先して決めています。
・「○○なる××」は「○○となる××」ではないのか?
前者の「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形(用例:母なる大地)。
後者の「なる」は動詞の成るのこと。どちらでもよい。
「ある」「ない」についても同様のことがいえます(用例:由緒ある家柄/理由なき反抗)
・「唯一」は「ゆいいつ」、「唯一つ」は「ただひとつ」と読みます。
・「春はあけぼの。」という文を断罪できますか。
各○○ごとに(重複表現)
「各」と「ごとに」は同じ意味を表し、これは重複表現ではあるが、
次の意図で誤読を避けるために慣用表現として用いる場合がある。
詳細
「各○○に△△を」という文の意味するところが
- ・△△が○○に依存する
- ・△△が○○の関数になっている
- ・○○それぞれに△△を適用する
といった場合において、この事実を強調するために「ごとに」という修飾語を付け加えて「各○○ごとに△△を」と書く。
「ごとに」をつけない文だと
- ・△△が○○に依存せずに決まる
- ・○○全体に一度だけ△△を適用する
といった意味に読んでしまう可能性があり、注意せねばならない。
上の例の一つとして、特に∀∃型の文を∃∀型の文だと誤読させないために
この重複表現を仕方なく用いることが多い。
書式について
・qed記号の前にある無意味な改行のうち、次の二つは加点対象外:
(1)証明の最後が中央揃えで終わっている場合。
(2)箇条書きスタイルの終了と共に証明が終わっている場合。
・「○○の証明」における英数字が斜体になるのは、デフォルト設定時の仕様です。
・式番号を引用する際に括弧をつける場合とつけない場合があるが
どちらでもよいとする。
・「(n-1)次元」と「n-1次元」のどちらの表記も可とします。
〜個、〜項、〜次などについても同様とします。
・三点リーダーは「…」と「...」のどちらの表記も可とします。
句読点等について
・定義を与えるときに = を使う場合と := を使う場合があります。
どちらでも構わず、統一する必要はありません。
定義であることを強調したいとき(注意を促したいとき)に後者を用いています。
・記号 ":" (コロン)は、「すなわち、」の意味で使うことがある。
(ピリオドを打たずに、コロンのあとに定理を述べてもよい。)
・上と似た用法として、文を完結させずにカンマを打ち、その後に定理を述べる場合があります。
このカンマは無くても構いません。
・箇条書きの項目は次のいずれでも構わない:
(1)カンマを打って改行…を続けて、最後だけピリオドで止める。
(2)すべての項目をピリオドで止める。
・中央揃え式をカンマで終わらせたのち「ここで〜」と繋げている箇所が複数ある。
このカンマをピリオドにしていない理由は、
「ここで〜」を関係副詞「where〜」の訳に対応させているためです。
・箇条書形式の命題の証明(や練習問題の解答例)において、「(1):」と「(1) :」の二種類の表記がありますが、
一つの命題の証明内で統一されていれば、いずれでも良しとします。
また、コロンがなくても良しとします。
数学記号や図式等に関するもの
・記号「lim」における n→∞ の位置は真下でも右下でもよい。ΣやΠ記号についても同様です。
(displaystyleであるかないかの違い。)
・図の名称、および挿絵内の文や吹き出しのピリオド抜けは加点対象外です。
『微分積分学の試練』について
・基本的には、英文および数式に関するカンマとピリオドは半角で、
和文に関するカンマとピリオドは全角にしてあります(出版社の指示によるもの)。
ただし、箇条書きの項目や中央揃えにおいては、日本語が混じっていても
前後との関係等から数式とみなして、あえて半角を用いている箇所があります。
・「上界の最小元」は正確には「上界全体の集合における最小元」ではないのか?
その通りですが、略して「上界の最小元」と述べるのが慣例となっています。
類似の用例:今回の期末試験の最高点は115点でした。
(正しくは「期末試験の得点をすべて集めた集合における最高点」)
・「および」の用法について。
A, B, Cを「および」を用いてつなぐ場合、行政文書等では「A, B, およびC」とするのが通例となっています。
本書では「AおよびB, C」としている箇所がありますが、こちらは加点の対象外とします。
「AおよびB, そしてC」の「そして」が略されているなどと解釈してください。